「3年B組 N先生の定年退職を祝っての同窓会です!」
同級生の女友達Y子さんから、こんな携帯メールが転送されてきた。
へぇ、N先生がもうそんな御年だったなんて。
まずは、「長年の教職生活、お疲れ様でした。」と、心の中で深くお辞儀。
よくよく考えてみると、8X年卒業組のわれわれだって、今じゃ立派なアラフォー世代。時間だけは容赦なく流れていたのだなぁ。まぁ、毎朝鏡に向かえば、白髪は目立つし、顔には疲れが漂っているし、時の流れと真剣に向き合う機会なぞ、ちょっと意識するだけでいくらでも作れるわけだが。
私達が県立P高校を卒業したのは、今を遡ること21年前の春。
卒業式は3月の初め、確か1日だった。私立大入試が全滅で浪人を決めてヤケクソになっていた人がいたり、はたまた、国公立大二次試験を数日後に控えている人がいたり、と、どうも落ち着かない、宙ぶらりんな時期の式であった。私自身は後者のグループに属していたため、当日の記憶はほとん ど残っていない。むしろ、互いに振袖姿でキャーキャー騒ぎながら写真を撮りまくった、成人式の夜にP市のホテルで開かれた学年全体での同窓会の方が、却って鮮明に思い出せたりする。
今回は旧3年B組だけの小さな集まり、とあって、ゆっくりと話が楽しめそうだ。何せ、20年振りに会う人もいるのだから、どうしてこれがワクワクせずに冷静でいられようか。みんな、どんな年齢の重ね方をして、どんな世界で羽ばたいて、どんなことに挑戦しているのだろう...。はやる心に、行きの電車で読もうとバッグに忍ばせた本を開いてみても、中身はちっとも頭に入ってこなかった。
会場は表参道の駅近く、細い路地を少し入ったところの、落ち着いたイタリアンのお店。この近所で「社長」をやっている、M君のお気に入りの� �で、日頃から接待や商談で利用しているのだそうで。嬉しいことに今夜は貸切だという。よっ、社長っ!さすが、抜かり無いねっ!
会場までの経路がみんなバラバラなので、仲良しの女友達グループとは「現地集合ね」ってことにした。私はちょっと早めに着いてしまったのだが、その分、一人、また一人...と、窓ガラス越しに現れる懐かしい表情を認めて、「あ~~~~!!!!○○○ちゃん!!!」「おぉぉお~~~っ!あれは××君!!!」と、「当てっこゲーム」に長い間興じることができた。
髪型が変わっても、お肌がやや荒れ気味でも(お互い様ね!)、額が後退して「おっさん」度が増していても、...そして、全体的に膨張して「どすこい!」化が進んでいても(←私を含む数名...。)、笑顔がこぼれるや否や、そ� �にいるのは18歳の高校生。
人間の記憶って、「声」に手繰り寄せられて蘇って来る部分が大きいのだなぁ。知らなかった。
世界史のN先生は、「私学の雄」として有名なあの大学を卒業後、内部進学者であっても容赦なく不合格にする、超・難関の大学院博士課程で学んだ、正真正銘のインテリであった。だが、「女で道を誤り」(←先生ご自身の表現)、研究者への道をスッパリと諦め、愛する女性との家庭を築くため、公立高校の教員となられた。
道を誤り、なんて先生はおっしゃるけれど、何度か先生のご自宅に押しかけ訪問したわれわれ教え子は、その「女」イコール、美しく、聡明な、先生ご自慢の奥様であることを知っている。「誤り」というのは、いつもポーカーフェイスでブラックジョーク爆弾を二、三発炸 裂されるN先生ならではの照れだ。ま、生徒には全てお見通しなのだけど。
会場に集まったのは旧B組45名のうち、半数弱といったところか。海外や地方で暮らしている人もいるし、実家が転居してしまいどうしても連絡が付かなかった人もいるのだから、まずまずの出席率と言えよう。ただ、今回の言い出しっぺであるH君が、「どうしても抜けられない仕事」で欠席したのが本当に悔やまれる。あぁ、その「いいひと。」さ加減、昔と全然変わってないよ...。
美味しいお料理や、ワインを楽しみながら、話はあちこちで盛り上がる、盛り上がる。まずは、互いの近況報告や、家族の話。それから、「欠席裁判」よろしく、その場にいない同級生の消息や、本人が聞いたら怒りそうなバカ話や失敗談など。笑い声で彩られた、100 %毒の無い、陽気なおしゃべりって、こんなにも元気を与えてくれるものなんだ。
「俺、未だに忘れられないんだけど、Mさんがさぁ、自習時間か何かでシーンとしてた時、窓の外見て、『ギャ~~~~~~!!!』と物凄い声で絶叫したことがあって...。」
「あー!あの、犬がいきなり子作り作業始めちゃった、っていう、あれ!!!(爆笑)確かにあの時のMちゃんの声はすごかった!」
「そうそう。途端に、男子がドドドッと10人くらい、窓際に押しかけてきて...。」
「だ、だ、だって、犬が二匹、じゃれ合って遊んでいるから、『カワイイなぁ~。』と、微笑ましく見てたら、いっきなりああいう事になっちゃって!!!」
(←Mちゃん、既に3児の母なのだから、そこまで真っ赤になってうろたえなくても...。)
「T君って、黄色いヒマワリ柄のラブリーな靴下、よく履いてたよねー。密かに私ら女子はチェックしていたのだよ。」
「そうだったっけ~?母親が買ってくるのをテキトーに履いてたから、覚えてないよ~。」
「いや、かなり目立っていたよ!だって、ジャージの裾をまくり上げて、ヒマワリ柄が全部出るようにして履いてるんだもん。あれは強烈だったー。」
「R君のお父さんが亡くなって、クラス全員でお通夜に行った翌日、R君がちょうど日直で、学級日誌に『昨日はみなさんありがとうございました。でも、ウチが○○教の信者だというのがバレちゃいました』なんて書いてたよねー。」
「それ、2年の時だろ」
< p>「Rは今、何やってんだ?大学デビューした後、性格変わったという噂だけど。」
「アメフトやってたんだって」「商社に行ったってよ」 (一同、爆笑)「似合わね~!!!」
いいなぁ、同窓会。
同窓会の魔法は「一晩限定」だからいいのかもしれない。シンデレラの魔法と同じで。
たまーーーーにしか巡って来なくって、しかも、お財布に余裕がある時にしか食べられない金皿に載った極上の大トロ@回転寿司のようなものだ。あまり頻繁に味わい過ぎると、有り難味が無くなってしまう。だから、5年、10年、15年...といった具合に、忘れかけた頃に集まるぐらいでちょうど良いのかなぁ、って思う。
おしゃべりビッグウェーブの第一波がようやく落ち着いてきた頃、集まりの主旨を忘れていなかった例の社長 ・M君が音頭を取り、先生の定年退職をお祝いすることとなった。
先生には可愛らしいブーケ(帰りの混んだ電車で人目を引きすぎてはお気の毒なので、サイズの方はやや小ぶりで。)、そして私が大好きな 文庫屋「大関」 さんのコレクションより選んだ、エジプト柄の文庫本カバーをプレゼント。
文庫サイズブックカバー 価格:9,500円(税込、送料別)
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既にお子さん達は巣立たれたとはいえ、先生は21年前と同じマンション暮らし。しかも、大の本好きと来ていらっしゃる。私もその頃は狭い賃貸で窮屈な思いをしていたので、収納の問題がいかに切実であるかはよく理解していた。何よりも、かさばらない物を...と考え、すぐに思い浮かんだのが、このブックカバーだった。
そんじょそこらでは見かけないエジプト柄は、大層お気に召したようだ。満面の笑顔とともに返って来た「ありがとう。大切に使わしてもらいます。」という先生の言葉に、身も心もぽっとあたたまった。図々しく贈り物ショッパーを買って出て、本当に良かった。
セレモニーが一段落すると、� ��びクラスの面々の懐かしいエピソードや、子育て真っ最中の人にとっては興味津々の話題・最近の公立高校事情など、話は四方八方へと散って行く。
ふと、一人が思い出したように言った。「そういえば、昔、男子だけで酒持って(←オイオイ。)先生んちにお邪魔した時、H田センセイがいきなり舟盛り持って現れたのには驚いたよなー」
H田センセイ!
どうして気付かなかったのだろう。ホントだ。H田センセイ、来ていないじゃないか。
センセイ、とは言っても、別に本物の先生ではない。四角い銀縁メガネの奥からちょっとひねくれ気味の両目をのぞかせ、学年一と定評のあった、ダントツの英語力でもって我々を「おぉぉぉぉ~~~~!!!」を圧倒しまくっていた、あのH田センセイだ。
「そんなの、驚か� �いよーん。」「甘いねっ!」「まだまだっ!」
...皮肉たっぷりのあの口調、今もはっきりと覚えている。どんなに激しく人を笑わせても、顔の筋肉は微動だにさせない。高校生にして、彼は既に英国流ブラックユーモアを完璧に体得していた。単なる語学オタクのガリ勉とは一線を画す、スゴイ奴。誰もがそう認めていた。
今、ようやくわかったのだが、H田センセイはこの日の主役・担任のN先生と多分にキャラが重なっていた。「ポーカーフェイスで、しれっと一発面白いギャグをかます」ことにかけて、彼の右に出る生徒はいなかった。見かけこそ全く違っていたものの、お二人の個性は非常に近い位置にあったように思う。
H田君が「センセイ」と呼ばれていたのも、もしかしたらそんな「N先生の一番弟子」っぽ� �部分をみんなが感じ取っていたからなのかもしれない。
「そーなんだよなぁ...。俺、冗談で、あいつに『おい、お前、うちに来る時は何か美味いもん持ってこいよ!』なんて言ったら、本当に親(寿司屋)に舟盛り作らせてやって来たんだよー!あれには、びっくりしたなぁ~...。」
N先生の目が、懐かしそうに遠くの方へと泳いだ。
一年ちょっと前までアメリカで十数年暮らし、旧3-B・男性陣の近況に関してはてんで疎かった私は、思い切って尋ねてみた。
「ねぇ、H田センセイって、今どうしてるの?」
一瞬、空気が固まった。
沈黙の後、私に同窓会のお知らせメールを転送してくれたY子さんが、恐る恐る口を開いた。
「...べーやん、ひょっとして知らなかった?...H田センセイ、 数年前に自殺したんだよ。」
(真っ直ぐに正門へと続く坂道の両脇を埋め尽くしていた、あの桜だね...。)
Last updated 2012.04.17 09:01:05
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滅多なことでは特定のお店や品物を紹介したがらない私が、今日は勝手に応援団活動やっちゃいます。そのお店とは、こちらの「文庫屋 大関」さん。
下の写真は、文庫本サイズのブックカバーです。どうです。素敵でしょ?私は、日本に行った時に「文庫手帳」「文庫本サイズノート」を何冊か仕入れて来ては、このカバーをかぶせ、ちょっとした覚書ノートとして枕元に置いています。
| 文庫サイズブックカバー |
前回ご紹介した精神科医のジュディス・オルロフ博士のお勧めに従い、印象的な夢を見たとき、ガバッ!と跳ね起きて、すぐに筋書きを記録できるように...と思ったのですがね。残念ながら元々夢をあまり覚えている方ではなく、「夢日記」としてはほとんど機能していません。で、単なる備忘録のようなごった煮帳になってしまっています。
一つ一つが職人さんの手によって丁寧に彩色されているんですね。正真正銘のMade in Japan、それも東京はスカイツリーのお膝元・墨田区産ですよ!ビバ、地場産業っ
私が文庫革のコレクションをささやかに始めたのは、今から7~8年前のこと。当時は、注文の際に店長さんとメールのやり取りを楽しんだり、と、お店全体にどこかのんびりとした空気が漂っていたような気がします。今ほどネットショッピングが盛んでなかった、というのも一因かもしれませんね。
あの頃は、お店の品揃えも今と比べてググッと充実していました。(←ごめんなさいね~、でも、これは事実なので書いても差し支えないでしょう。)なので、「どーれーにしようかなぁ~...。」と、柄と柄の間であれこれ目移りしちゃって、選ぶのも一苦労、という嬉しい悩みもありました。
...というか、毎回、悩みに悩んでまし� �(笑)。うわ、贅沢。
で、気が付いたら、お財布、小銭入れ、印鑑ケース×2、文庫本カバー(前出)、携帯電話ストラップ、そして義母や他の年配女性への贈り物...と、結構たくさん買っていたのですね。(もっと欲しいところを必死に鋼のような意志でもって抑えていた、というのが正直なところ。)
月日はあっという間に流れ、私の知らないところで文庫屋「大関」さんは、いつのまにかじわじわと人気を上げていたようです。今では、楽天市場のショップ上で「在庫有り」の商品を探す方が難しくなってしまいましたねー。もはや宝探しの域に達した感すらあります(笑)。
特に、渋めの、どちらかと言うと男性向きかな?って感じのマイナーな和風柄は、一度品切れになると、その後再入荷する望みはほとん� ��ゼロに近くなってしまいました。
かぎ縞、
横波、
巴...。
お父さん世代へのプレゼントに使える!と、狙っていたのですが...一向に戻ってくる気配が無くって、残念です。(実際の柄はぜひショップのHPでご覧になってみてください。)
前から応援していたお店が世間からの注目を集めて、どんどん人気が高まっていく。
嬉しいような、ちょっぴりさみしいような...ですね。
でも、「良い物はみんなだって大好き!」なのですから、まぁ、喜ばなければいけませんね。みんなにどんどん教えてあげて、商売繁盛のお手伝いをする方が、お店のためにも、そして私達みんなのためにも結局はプラスになるはずです。内緒にしておきたい気持ちは山々ですが、ここはいっちょ、拡散作戦で行きましょう。
3月末には浅草・浅草寺へと続く仲見世裏の、少し入ったところに実店舗もオープンしたとのこと。遅ればせながらではありますが、おめでとうございます
あ~、仲見世・亀屋さんのおいし~い人形焼が食べたいよぉぉぉ!!!おじさんが実演販売して、ぷうぅぅ~んと香ばしいにおいを放出している、あの角っこのお店です。
浅草名物� ��人形焼のお店は他にもいっぱいありますが、皮とアンコとの両方に「いい味出してるわぁ...」とうっとりできるのは、やはり亀屋さん、かなあ。駅売店やスーパーの人形焼しか食べたことない方には、一度亀屋を試してごらんよ!と言いたいですね。ホカホカの焼き立てを袋に入れてもらい、家に持ち帰って食べる瞬間のシアワセ、ここアメリカでは夢見ることしかできませんが...。
話を文庫屋「大関」さんに戻して、と。
日本人だけでなく、海外からのお客様にもこの素敵な文庫革を知っていただければ、一ファンとしてこんな嬉しいことはありません。
こういった江戸の職人技でもって勝負するタイプのお店は、往々にして後継者不足が悩みの種。でも、幸い、大関さんには次々と若い女性の職人さんが� ��生しつつあるそうです。わかります!だって、一つ実物を手にしてしまったら、「もっと欲し~い!」とヨクバリ心が湧いてきますし、物作りが得意な方だったら、多分、「私、自分で作りた~い!」という気持ちが生まれるのは、ごく自然な流れだと思うのです。
そうです。もっともっとたくさんの若い人たちが「大関」の製品に出会い、職人として修行を積んでいってくれれば、お店に並ぶ商品も少しずつ増えていくはず。というか、増えていって欲しいな~、と、切に願います。
だって、誰かに文庫革の小物をプレゼントしたくなった時に、在庫が無いから諦めなくっちゃいけない、っていうのは、あまりにも悔しいですもの...。実は、私も一つ、好きな柄(錦紗・青)のメガネケースがずう~っと欲しくて時々チェ ックしているんですけど...いつも品切れなんです。たとえ入荷したとしても、多分誰かが目ざとく見つけて即座に買ってしまうのかもしれません。
商品違いですが、色・柄のご参考までに...。イスラムの装飾芸術を思わせるような、オリエンタルな雰囲気が素敵なパターンです。もう、全色(青・緑・紫・ピンク)揃えたい~!
鮮やかな伝統とモダンが薫る工芸品の大人気【文庫革】。持ってると必ず褒められる可愛さです。... 価格:7,500円(税込、送料別)
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文庫屋「大関」さん、他にも素敵な柄がたくさんありますので、よろしかったら覗いてみてくださいね。次に機会があれば、こんな柄のお財布に挑戦してみてもいいな~、なんて、またしても夢(=物欲)が膨らみますな~。危険があぶないわ。(←このフレーズ、出典ご存知の方がいらっしゃいましたらお知らせください!)
ぐるっとファスナーの長財布
お母様、おばあ様、その他大切なあの方へのプレゼントにいかがですか。
もちろん、ご自分へのご褒美にするのもいいですね (注意:多分、一つ買っただけでは済まなくなりますので、ほんの少しの自制心をお忘れなく...。)